私が高校を卒業すると母親はいきなり「結婚、結婚」と焦りだした。
理由は父が母をせっついたかららしいけど、父が焦った理由についてはわからない。
そのことを私は母に聞かなかったし、母は父に聞かなかった。
聞けるような家族関係になかったしね。
で、母は焦ってそこら中に誰かいないかと声をかけて回ったらしい。
母が安心するならと私は見合いをした。
相手が断ってくる分には誰も私に文句を言えまいと思ったからだ。
ワタシには結婚願望はまったくなかった。
自分の親を見れば結婚に関する甘い希望はゼロになる。
結婚=不幸、だった。
ま、とにかくとりあえず母を安心させるために見合いをしていたようなものだ。
で、2番めに見合いをした男というのが・・・・
スナップ写真はじゃがいもみたいだった。
丸いのを少しでこぼこさせた感じで小さな目鼻がついていた。
へぇー、ジャガイモ君なんだと思いながら見合いの席に行って驚いた。
そこには別人がいたからだ。
流行った言い方で言うと涼やかな目鼻立ちの正油顔の男がいた。
ガッツ石松がいきなり中村橋之助になった。
その場は互いの顔合わせに終わり、というのは語弊があるかな。
付き添ってきた彼のオバサマというのが、甥っ子自慢をとうとうと話したのだよ。
そんなに素晴らしい男でも売れ残るんだなぁと不思議に思っていたんだけど
後にああ、やっぱりねぇと納得することになる。
後日2度目に会った時に男は言った。
「写真の顔と全然違ってびっくりしたでしょう?
あれはキャンプに行って蚊に刺されて腫れ上がった記念にとったものなんですよ」
ああ、多分この人は結婚する気がないんだとほっとした。
とともに失礼なヤツだなと思った。
だって見合い用に他人の写真を出してくるようなものだもの。
そんな失礼ってないと思うぜ。
失礼男はどこまでも失礼で、
3回目のお誘いは夕方6時近くに電話で
「今(酒を)飲んでるから出て来い」といったもので、
たまたまその日は母が他出しており、妹も帰りが遅く私が父の夕食担当だったので、
その旨お話して別の機会に、とやんわり言った。
(ていうか、夕方のこのこと出かけていく気になんかならないよ。
また外出の支度してバスに乗って街中まで行って、見知らぬ店を捜すなんてさ)
言ったつもりだった。
が!
失礼男は見合い話を進めた彼の伯母とやらに「断られた!断られた!(ひどい、ひどい)」と訴えたらしい。
で、翌日伯母とやらは「(私の大事な甥の誘いを)お宅のお嬢さんが断ったそうで」とうちに抗議の電話をかけて来た。
私はその前に、失礼男からこうこうこういう電話があって、やむを得ず断った、と母に報告してあったので、母はその旨を伝えて誤解を解いたわけだが、
私は「断られた!」と誤解したまま話が壊れてもいいと思っていた。
その抗議の電話を受けたあと、何故出ていかなかったのかと母からこっぴどく叱られた。
そいつんちに借金してるわけでもあるまいし、なんでそこまでヘイコラしなくてはならないのかと私は悲しかったけど、
母は必死だったらしい。
でもさー長い付き合いの女に言うのなら理解できるけど、
失礼男にとって私は、長年付き合った女ではなくて見合いで1・2回会っただけの女だわよ。
それなのに「今飲んでるから出て来い」なんて百年早い!っていうか
何考えてるんだ?!だと思うんだけど、私がおかしいのかな。
そういうわけで、どう考えても失礼だろう、と私は思ったけど、
見合相手に説教するのもナニだなと思って
私としては優しく「今日は無理ですけど、別の日に誘ってくださいね」と優しく言ったつもりだったので、まともな男なら次の機会に電話してくるはずなのに
ソイツが伯母に訴えたのには驚いた。
別の機会に、とちゃんと言ってあるのだから、日を改めて電話してくればよかったのである。
それをナニを血迷ったのか、伯母に訴えるなぞ、言語道断、道路横断である。
自分でどうかしようと思わなかったところが、もともと気に入らなかったのにプラスされてさらにゲンナリした。
ま、そういう男だから、女ができないんだな。
結局その男との話はなんとなくたち消えてしまったらしいので、
ほっとした。
別段結婚したかったわけではなかったし
その失礼男も嫌いだったからだ。
一番めの男もたいがいトンデモ男だったけど、3番目もかなりとんでも男で
4番目はまあまあだったが、
5番目に見合いしたダーはその中で一番優れものだったので
どうしても結婚しないといけないのなら
その相手がダーであって、本当に良かったと思っている。
ダーがどう思っているかはわからないけど。
あ!思い出した!
この失礼男とはホテルの喫茶コーナーで見合いしたのね。
その時彼はレモンティーを飲んでいたんだけど
何故かレモンを入れっぱなしにしておりました。
それだと、飲もうとするとレモンがこっち側に移動してくるじゃない?
彼はそれをふーーっと吹いて向こう側に動かし、レモンがあっちに行った時に急いで飲むというかなり変則的な飲み方をしていたの。
この話は誰にしても受けるのであちこちでしゃべりまくって
鉄板ネタみたいになってるけど、本当のことなのよね。
かの甥っ子ホメホメ伯母さんがレモンをカップから出してあげればよかったのに。
そうでないと一生彼はレモンティーを飲む時にふうふうしなくちゃならないわ。