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残酷物語

ダーリンが祖父母(義父母)と孫(師匠)の関係の中で必ず言う台詞に
 「じいちゃんとばあちゃんにとってベス(=師匠の仮名)が一番だからね」
というのがありました。
真実ではないののにどうしてそう言うのだろうとずっと嫌だなぁ思っていましたが
もしも師匠もそう信じていたのなら
師匠に「お父さんの言ってる事は大嘘だからね」とわざわざ言うのも
傷つく話だなと思って、ずっとそのままにしていました。

でも、うちに義父が電話をかけてきた時
義父はまずダーリンと長々と話をし、そのあとで師匠に電話を替わり
なにやら説教をし、すぐダーリンに電話を替わるように言って
またダーリンと長々と話すというパターンだったので
気が付く子は気が付くかもしれないとも思いましたが。

何故、師匠に説教しているとわかるかと言うと
毎回師匠が
 「じいちゃんは、私が勉強してないって決めつけて怒る」
と悔しそうに言っていたからです。
そうです。
世間によく言われるような、親が説教し、祖父母が「まあまあ・・・」と
孫をまるごと受け入れる、というパターンの逆をやってくれるのです。
師匠が「ちゃんと勉強しているよ」と言っても
義父は「本当か?嘘をついているんじゃないのか?」と
毎回疑わしげに言い、説教が済むと
 「さ、お父さん(=ダーリン)に替われ」
とすぐ言うのだそうです。
ですから、祖父と電話で話したあとの師匠はいつもムッした顔つきでした。

そんなある日、
師匠が私に言いました。
つもり積もっていたものに耐えられなくなった、いう感じでした。
 「私は爺ちゃんの一番でないのに、お父さんはどうしてそう言うの?」
ああ、やっぱり気づいていたのか・・・・
そうよね、よほど馬鹿でない限りわかるわよね。
だから、師匠は私の母と電話で話した後に、
師匠が「お母さんと替わる?」と母に聞いた時、「替わらなくてもいいよ」と
言われるとちょっと嬉しそうな顔をしたのでしょう。

師匠が気が付いている事を知った私はダーリンに聞いてみました。
 「あなた、じいちゃんばあちゃんにとってベスが一番、って必ず言うけど
 まさかそう信じているわけじゃないでしょうね?」

 「うん・・・俺が一番だって知ってるよ」

 「じゃあ、これから、じいちゃんばあちゃんにとってベスが一番、て言わないでくれる?
 あの子、それが本当じゃないってちゃんと知ってるから。
 本当でない事をあの子に押しつけないで欲しいの」

ダーリンは渋々承諾したものの、
その後も頻度は減りましたが時々そのフレーズが飛び出すたび、
この人はよほどこの幻想が好きなんだなと思いました。



さてさて、この2月に義母は膝をぱっくり折って入院し、
たまたま仕事に融通の利く立場にいたダーリンは
1週間の休暇をとり、付き添いに行きました。
で、
いったんうちに戻り、
1週間後の土日月とダーリン、私、師匠の3人でミント市まで見舞いに行きました。
月曜日、私たちが自宅に戻るために義母にいとまごいを言った時
義母は「帰るな」とごねました。
まあ、これは想定の範囲内でした。
そこで、ダーリンが「仕事があるから」と言うと義母は言いました。

 「あいつらをさっさと帰してしまって、マット(=ダーリン)だけ残ればいい」

あいつら、とは私と師匠の事です。
この台詞は想定の範囲外でした。
師匠の心に重く残らなければいいがと、それだけ願いました。
さらに想定外だったのが
「また来るから」となだめるように言うダーリンに向かって
義母は
 「マットは母さんを捨てるんだな!?
 ああ、いいよ。マットが次ぎに来た時に
 母さんは死んでるんだからな」

と言った事でした。
考えようによっては「次ぎに来る」なんて言うところをみると
ダーリンに母を捨てる気がないのをわかっていて、
そのうえで言っているのがまるわかりなのですが・・・・
話にはよく聞く台詞でしたけど、
義母の性格をクールだと思っていた私はたいそう驚きました。

その後、いとまごいのために
 「お義母さん、また、来ますからね」
と言った時、私は自分の笑顔がひきつるのがわかりました。

普通の状態でないから、そういう台詞が出たのだ、
本気で受け取るべきではない、とほたいていの人は義母の肩を持つでしょうね。
でも、そういう状態だったから、本音が出たのだと私は思います。
でも、その事は師匠には言いませんでした。

ところが、後日、
自分の生まれ育った所を離れたがらなかった義母が
私たちの暮らすサトホロ市の病院に転院先を選んだ理由というのが

 「ばあちゃんがベスに会いたいからだって」

と、ダーリンは満面の笑みで言った時、
この人は本当に本当にこの幻想が好きなのだなとちょっとウンザリしましたが、
師匠もそう信ずるのなら私が真実を言うまでもないかと思っていると、
ある日、師匠が私にこっそり言いました。

 「ばあちゃんが私に会いたいから、なんて大嘘だよね。
 ばあちゃんが会いたいのはお父さんじゃん。
 なんでそんな大嘘つくんだろう・・・?」

 「たぶん、お父さんはそういう幻想を信じたいのよ」

 「ふうん・・・」

孫をまるごと愛する祖父母、そういう幻想もいいですが、
当の孫が幻想の裏側に気づいている事を
どうしてダーリンは気づかないのでしょう?
by kumorinotini | 2007-06-19 19:53 | 舅と姑とその周辺

ミラーサイトだったのに、本家になっちゃって・・・


by kumorinotini