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長男の嫁

素敵なお話とはいかないわね。



先週、義母が入院中、私が病院に行くと毎回義父が「ほら、母さんの大好きな須賀子さんだよ」と義母に言うのが気になっていたの。なんでわざわざそんな事を言わなくてはならないのだろうって。第一、義母から見ると私の存在理由は<父さんがもどって来るまでのつなぎ>でしかないもの。私はそう認識しているわ。義父が言うほど義母は私を好きではない、というか、今現在義母と私は非常にややこしい関係にあるのよ。世間から見ると、私は義母の長男の嫁なので、義母と私は嫁ー姑の関係になるのだけど、現在認知症の彼女からすると、私は<長男の嫁>ではなく、「ヘルパー」みたいな存在で、<父さん>がいない時のつなぎをやってくれる人であったり、オシャベリの相手をしてくれる人なわけ。こう言ってよければ、<父さん>の不在を私で我慢する、といった感じなのよ。

そうなの。義母は私の事を<長男の嫁>として認識していないの。毎日、顔をつきあわせているのに、よ。去年の長い入院から退院して2ヶ月もしないうちに彼女は頭の中から<嫁>の存在を消し去ったの。これが滅多に見舞いにいかないとか同じうちの中にいてもまったく顔出ししていないというのなら うなづけるけど、入院中は毎日午前と午後と見舞いにいったし(1~2時間間ずつ)、退院してからは、毎日顔を合わせている。なのに何故<嫁>の私のことを忘れてしまったのだろうと不思議だったわ。(私が「私はマットの嫁なのよ」と言うと「嘘だ!違う!!」と全身で否定してくるの。それはもう、断固たる態度だったわ。でも、ほかの件だと周囲にコレコレだといわれると自信のない顔になって「そうなの・・・?」と言うんだけど)

<長男の嫁>に関して義母の言葉は徹底しているの。いわく、<長男の嫁>とは一度も会ったことがない。いわく(義父母たちの自宅のある)オンセンチョウにも遊びに来なかった。いわく嫁は何を言ってるかわからない。などなど・・・・(数ヶ月前はとうとう「嫁は死んだ」とまで言ったわ。とうとう殺されちゃったわぁ、なんてその時は大笑いしたんだけど、笑い事じゃなかったのかもね)
その断固たる記憶が謎だったわ。
ひとつ思いつく理由はあったけど、あまり認めたくなかったし、アルツハイマーの人は好き嫌いに関係なく忘れる時は忘れる、と聞いていたし。

さてさて、そんなこんなへ、件の義父の「大好きな~」発言がきたのよ。義父は何故わざわざそんな事を言ったのか。それはまったく逆のある事を隠すためではないか、と勘ぐってしまったのよ。こんな事を考えることからして、私って実に嫌な女なんだけど、とにかくそう思ったんだもの。義父が誰に関してもなんらかの形容詞をつける人なら、ここまで深読みしなかったと思うけど、あまりにも唐突に始まったので、ついつい、ね。
で、止めときゃいいのに義母とオシャベリしている時に<長男の嫁>ってどんな人?とか、本当に全然会ったことないの?結婚式では会わなかったの?などと聞いてみたの。すると義母は眉間にしわを寄せ厳しい顔つきで「うるさい、うるさいっ!聞こえない!!」と叫んだのよ。実に不愉快そうだったわ。認知症で難聴の義母が「聞こえない」ことはあっても、「うるさく」感じることはないわけよ。だから、「うるさい」「聞こえない」と叫ぶ時は、その話題について不愉快に感じ、止めてほしいと思った時なのね。この1年以上のお付き合いでわかった事よ。本当に聞こえない時は「大きな声で言ってちょうだい」と耳に手をあてるの。その話題について考えるのが不愉快な時にだけ「うるさい」というのよ。私の聞いた事が彼女の感情にとって「うるさい物」だったのね。

そこで直球で「<長男の嫁のこと>好きじゃなかったの?」と聞いてみたの。すると義母はコクリとうなづいたわ。「嫌いだった?」と聞きなおすとやはりコクリ、そしてまた眉間にしわを寄せて「大嫌い!」と叫んだのよ。・・・・・・。あらま。そうだったの、知らなかったわ。「どこが嫌いだったの?」とさらに聞いてみると「長男の嫁だから」おお。ちょっと安心。何か具体的なことを言われたら、直さなくちゃなぁと思ったので、どこかほっとするところがあったわ。いや、安心、というのはおかしいかもしれないけど、義母の言葉を信ずるならば、古来から言われている<嫁ー姑>の問題なだけだから。

それにしても、義母にここまで嫌われていたとは知らなかったわ。まったく気づかなかったといってもいい。義母はそんな感情なんかオクビにも出さなかったもの。気づかせなかったのよ。なんとすばらしい演技力。というか、あまりにも耳が聞こえないので義母とはほとんど話していなかったのね。でも、今は声を張らなくてもがけっこう聞こえているみたいなので、きっと大嫌いな嫁の声を耳がはじいていたのかもしれないわね。なのに、私は重い難聴だと思っていたのよ。でも、さすがに、義父母のお宅を訪問すると義母が何かやたらと緊張していたのはわかったけど・・・まさか嫌われていたとは。ビックリだわ。

なのに、私は、義母の事を息子にヘバリつかないサッパリした気性の人、と誤解し、そんな義母に好意すら抱いていたのだから、ちゃんちゃらおかしい、というか馬鹿丸出しよね。
そんな鈍い私だけれど、義父に嫌われているのは知っているのよ。義父は認めないだろうけど、これまでの態度を見ているとおのずとわかってくるわ。つまらない事で目を三角にして怒鳴ってきたから。義父は不出来な嫁に満足していなかったのだと思うわ。才能に溢れたすばらしい長男にもっとふさわしい、もっとすばらしい最高級の娘を嫁に望んでいたらしいのよ。結婚したての頃、話のニュアンスからそんな感じはしていたわ。(「マット(=ダーリン)が良いっていうなら母さんは反対しない、って言うから(お前との結婚に)父さんも承知した」とか「お前は出世するマットの足だけはひっぱるな」「マットの仕事の邪魔だけはするな」なんて言っていたもの。ありゃ、ニュアンスじゃないか、充分直球で言ってるわねへっへっへなんで気づかなかったのかしら?馬鹿だったとしか言いようがないわ) 
あるいは自分の妻(=義母)が嫌うから嫌っていたのかしらん・・・?
義父にはあんまり主体性はないので、そっちかもしれないけど、どっちにしろ嫌われているのは事実だわ。
って、結局、私って夫の両親から嫌われてるってわけ?きゃあーー!!

今思うのは、義母がよくぞ<嫁いびり>しなかったものだ、ということ。やろうと思ったらできただろうに、義母は一切しなかったの。これはありがたい事だと思うし、尊敬に値すると思うわ。愛する息子を奪った女なんか顔も見たくなかっただろうに、行くたびに歓待してくれたのだから。幸か不幸か我が家は見合い結婚なのよ。長男がぞっこん惚れ込んだ、というわけでないあたりが「息子を奪った」とは言いきれないで、微妙だったからかしら。

これは余計かもしれないけど、次男の嫁のことは好きなんですって。
そして、先日お見舞いに来てくれた(義父の)姪二人のこともちゃんと覚えていたわ。
義母はわからないときは「わからない」って言うの。でも、二人が顔を見せて名乗ったら、それぞれの名前を言って「わかるよ」って言ったのよ。驚いたわ。だって、義父の姪は関西に住んでいるせいもあって、義母は彼女らと2・3回しか会ったことがないのよ!!二人の事は気に入ったのね。あ~あ、やっぱり、好きな人のことはちゃんと覚えているのね、たとえ認知症であっても。
私と比べるとえらい差だわ。


こういう新しい発見をしたので、誰かにしゃべりたくなって、思わず師匠にしゃべったら、師匠はさめた顔で言ったの。「だろうと思ってたよ」え?思ってたの?「うん。思ってたよ。バアチャンの頭の中での、お母さんの見事な消えっぷりからすると、そうなんだろうな、と思ってた」あちゃーーーそうなのかぁ。それはそれは・・・「でもさ、皮肉だよね、今ではバアチャンにとってお母さんは一番の話し相手じゃん」むむ、そうなのよね。そのへん、バアチャンが気の毒だわね。ううん、認知症になって大嫌いな<長男の嫁>の存在を消してしまえて、かえって幸せなのかしら。絶対に怒らないヘルパーみたいな女も登場したし。

でも、これがわかったからといって、義母に対する態度をガラリと変える気は起きないのよ。これまで通りでいくわ。私は<オシャベリ専門のへルパー>。だって、なんといっても義母は私にイヤガラセをしなかったし、今は認知症だしね。認知症にならなかったら、私もこのことを一生知らなかったでしょうしね。それに、いくら今は認知できてないにしても、大嫌いな<長男の嫁>の手を自分から握って「オシャベリしよう」と言ってくる義母を見ると、なんだか気の毒でならないのよ。もしも、認知症でなかったら、こんな事絶対しなかったろうから。
そう考えると・・・・認知症って、やっぱり残酷な病気だと思うわ。





それにしても、よ・・・・以外にもけっこうへこむというか こたえるものだわね。
鈍い私でも。

いくら真実が知りたいと思っても
知らないほうがいい真実もあるのだなと痛感したわ。
なんでもかんでも知りたいと思わない方がいいのかもしれないわね。

なのに、自分から話を引き出すなんて。

馬鹿な女・・・・だわ。
by kumorinotini | 2008-07-30 09:34 | 舅と姑とその周辺

ミラーサイトだったのに、本家になっちゃって・・・


by kumorinotini